Nature3Dの変わり種フィラメント「LFY3M」のレビューです。もっとガッツリうまく出力できるようになってから書きたかったのですが、私の調整力不足にて、いったんここで公開することにしますorz
LFY3Mの特徴
LFY3Mは、一般のPLAフィラメントとは一味違う性質を持っています。公式ページのポイントを要約すると…
- かんたんに削れるので、印刷後の手直しがラク
- アニール処理をすると140°Cの耐熱性が加わる
- 吸水率が一般PLAの約半分なので造形不良が起きにくい
- 無料配布サービスあり
かんたんに削れる
私は、特に「かんたんに削れる」という点をヒジョーに魅力的に感じました。
自分でモデルを作るにしろ、Thingiverseでダウンロードするにしろ、印刷後に「ここをちょっと削らないとパーツが組み合わさらないな」ということはよくあります(初心者なので)。穴をちょっと広げたいな、とかもあります。だいたい、印刷1回目はテストランで、その結果を見て調整して、2回目以降の印刷が本番になります。そんな時、わざわざ印刷し直さなくても、少し削る、あるいは追加で印刷したパーツを接着するだけで調整できたら、かなりラクになりそうです。
何よりもサポートの除去が一番ハードです。PLAは一般的に意外と硬くて削れないし、やすりで表面を滑らかにするのにも時間がかかります、というか初心者の私にはほぼ不可能です。ドレメルでの処理も試そうと思ったのですが、うまく遅い速度で削らないと、おそらく削れるより先に熱で溶けちゃうだろうなと思い、試していません…。場合によっては、モデリングや印刷よりもサポートの処理に時間がかかると言っても過言ではありません。しかも下手に削ると色つきのフィラメントはそこだけ白っぽい色に変わっちゃうし…。
サポートが残ったままの状態
しかし、かんたんに削れるフィラメントということは、サポートを除去するのもかんたんなはず!!
耐熱性
アニール処理で140°Cの耐熱になるということは、食器洗い機で洗えるようになるということ??我が家は間取りの都合でタンク式でパワー弱めの食洗機を使っていますが、お湯は75°Cぐらいのようです。一般的なPLAだとNGな温度なんですよね。
今回はそこまで手が回らず試せていませんが、耐熱性が出るなら、食洗機を使う前提で自分が使いたい量1回分の専用軽量スプーン(カップ)等も作れるかもしれません。処理することで多少変形するようなので、量はまちまちかもしれませんが。笑
FDM 3Dプリントの場合は、層と層の間に隙間ができやすいので、そこに変に水が残ったりすると不衛生かもしれません…。食器は法律で厳しく規定されているので、何も考えずに作ってそのまま売るのは完全にアウト(多分)でも、自分で作って自己責任の範囲内で便利に使う分には良いと思います。
レビューで無料配布してくれる
LFY3Mに興味はありつつも、初心者だから難しくて扱い切れないかも…とちゅうちょしていたところ、フィラメント無料配布サービスを発見。今回はこのサービスで提供いただいたフィラメントで印刷を試してみます。
出力環境
今年2月に購入した「QIDI TECH 3Dプリンター X-Smart」を使用しました。※初めての3Dプリンターです。
このプリンターにはPLAフィラメントがオマケで付属していまして、同じく付属のスライスソフトQIDI-Printのプリセットの印刷設定でうまいこと印刷できるようになっています。その他のフィラメントもAmazonで購入して試しましたが、TPUフィラメントも含めて、プリセットをそのまま使えばだいたいうまくいきました。
3Dプリンターにはとにかく造形がうまくいかないイメージを抱いていたので、こんなにかんたんならもっと早く買えばよかったと思いました。150x150x150mmの印刷エリアも「小さいかも?」と思っていましたが、分割して出力するように工夫すれば、そこそこ印刷できます。
我が家の温度や湿度環境に関しては、一言で言えば、よくないです。3Dプリンターはだんぼっちの中に配置しているので、中に熱を発する機材を置いた状態で、温度は20度〜26度くらいで変化します。だいたい湿度は50%〜60%ぐらいでしょうかね…部屋用の除湿機も使ったりしますが、安定しないです。焼け石に水かもしれませんが、フィラメントは除湿剤を入れたドライケースで保存しています。フィラメント乾燥機が欲しい…。
フィラメントの到着状態と質感
スリムなパッケージで◎
空気を抜かれてぴっちり密封された状態で届きました。第一印象は「小さい・軽い」でした。笑今まで私が購入したフィラメントがたまたま1kg売りのものが多かったからだとは思いますが、フィラメント は重くて、取り回しにくいのです。LFY3mは260gなので、軽くて設置がラクだし、保管場所も取りません。個人が趣味で印刷するぶんには、これぐらい小さな単位で販売してもらえる方が助かります…!
しかも、スプールなしのリフィル商品もあるそうなので、ストックも場所を取らずに保管できます。
今までスプールを再利用するという発想がなかったのですが、これはいいですね。スプールの口径が合わないとそのままではプリンターにセットできないですし…。
スプールの3Dデータも公開されています。
出力結果
本来は、どちらかというと肉厚に造形する用途のフィラメントということで、薄いものの造形には向かないようです。しかしながら、私が作りたいものはどうしてもなんらかのケースやホルダーになってしまうことに気付きました。そこで、過去に削れなくて苦労した「カードケース」をもう一度作ってみたいと思い、再挑戦しました…。
※当時は、あまりにも削れなかったので、削るのは諦めて、スライスソフトでHorizontal Expansionをマイナスに調整して再印刷して解決しました。
あたたかみを感じる仕上がり
印刷物を出力して、そのままの状態で手にとった時の印象は「きれい」「紙みたい」でした。ボード紙っぽいというか、石膏っぽいというか…。触っても、他のPLAフィラメントと比べて、皮膚の熱が奪われない感じがします(あくまで印象の話です)。
比較対象:Apple Pencil 2
色味はややアイボリーっぽい白です。色は反射なのでなんとも言えないですが(光源はもちろん見る角度でも変わりますしね)、若干透明感があることもあり、落ち着いた色合いに感じます。清潔感がありつつ青すぎないので、生活空間で使いやすい色だと思います。賃貸の白壁紙より、ほんのり微妙に青いぐらいです。笑
気のせいかもしれませんが、他のフィラメントで出力したものと比較して、油性ペンで表面に書いた文字が消えにくい気がします。
削れた!
確かに削れました。まるで木のように削れます!愛用の3Mやすりやデザインナイフでも削れました。3Mやすりはジグソーパズル型のスポンジのものです。普段は中目(120〜180)でもなかなか削れないのに、LFY3Mは極細目(320〜600)あたりでも普通に削れます。
削らないとパーツが組み合わさらない!そんな時も…
デザインナイフでゴリゴリ削れる!!便利!!
無事にハマるようになりました
表面を磨くとさらにしっとりした印象になるので、高級感を出せそうです。今までオブジェ系はあんまり作る気がしなかったのですが、このフィラメントのように磨いたり削ったりしてキレイにできる前提なら、ちょっと試してみてもいいかもと思いました。
サポートを取りやすい
どうしてそうなるのか分かりませんが、サポートもスパッと取れて気持ちよかったです。
下の画像の三角の部分にもともとサポートがあったのですが、ちょっと力を入れて押したら、サポート部分がすっ飛んで行きました(笑)
サポートが存在していたとは思えないほどキレイに取れた…
出力したての時はゾッとするようなサポートも…
指でメキメキサポート部分を押すだけで、こんなにキレイに除去できました。
ちなみにこのスプーンは、出力するときにうっかりいつものPLAの設定(印刷190°C、プレート50°C)で出してしまいましたが、それでもそれなりにキレイに出力できました。むしろ、サポート量が不足していたために崩れた部分を除けば、表面的には一番キメが整っていてキレイに出力できていると感じました。
接着できた
以前苦戦したカードホルダーは、分割して出力したパーツを複数個、接着する必要がありました。乾燥後、何回か力を入れると接着が取れてしまったため、そこでもうまく行きませんでした。
今回も同じように接着してみました…
一週間たちましたが、パーツはしっかり接着されていて、取れる気配はありません。触って、ねじったりした時に、接着部分が全然たわまないので、普通に使っていれば今後も取れることはないと思います。
困ったことと対策
スプールの口径が付属ホルダーと合わなかった
X-Smart付属のスプールホルダーよりも、LFY3Mのスプールの方が口径が小さかったです。
入らない…
こんなこともあろうかと、置き型のホルダーも印刷して持っていたのですが、それを使うとフィラメント送りがうまくいかず、印刷途中でフィラメントが折れてしまう事態が発生しました。フィラメントがピンピンしており、曲がりにくく、折れやすいようです。
今回は役に立たなかった置き型のスプールホルダーPHIL
最終的には、たまたま持っていたクランプ式のマイクスタンドを逆さに吊るしてそこにスプールを通すことで、うまく印刷できるようになりました。たまたまかもしれませんがうまくいっています。笑
あるものでどうにかする心
温度設定が難しい
推奨プリント温度は、下記の通り。
ホットエンド:210~230℃ヒートベッド:常温~40℃
最初、うっかりいつも通り190°Cで印刷してしまった時は、確かにちょっと温度低めなのかな?フィラメント が細く出てるかも?と感じました。
次は210°Cで印刷…しましたが、印刷途中で「なんかうまくいっていない気がする」と思い、止めました。
思い切って230°Cで印刷してみた結果がこちら。
これは見るからにうまくいっていない感じ。側面がデロデロしてます。一応、飛び出てるピヨピヨを取ったり磨いたりすれば使えなくもないですが。
200°Cで印刷した時はそれなりにキレイに出力できましたが、側面が、やや凸凹…。
そして、印刷終了後にそのまま放置していたらノズルが詰まりました。出力後もファンが回って冷却しているようなので大丈夫かな?と思ってましたが、ダメみたいです。つまらせたくなければ、印刷終了後は速やかにフィラメントを引っこ抜いた方が良さそうですね。不精したらダメね。
最近はノリを使わないとフィラメントの1層目が印刷台に固定されなくなってきたのですが(買ったばかりの時は食いついたのに…)、温度設定を高めにするとノリなしでもぴったり密着するのでそれは便利だなと感じました。
温度だけではなくて印刷速度や影響すると思うので、試したくはあるのですが、時間切れ…!
次に印刷する時は、推奨からはかなり外れますが、プリント195°C、ビルドプレート50°C、ビルドプレート(1層目)60°Cで試します。
総合的な感想
LFY3Mは、やっぱり初心者の私には少し扱いが難しいフィラメントでした。でも、上手に印刷できるコツをつかめば、時短かつ美しく印刷できそうです。なんとなくもうちょっと試し続ければうまくいくようになるのではという手応えはあります…!
趣味で3Dプリントする上で、とにかくサポートの除去が一番つらく、ヘッドが2つあるプリンター(サポートを水溶性フィラメントで印刷できる)に買い換えるべきかなと思っていたのですが、このフィラメントを使いこなせるようになれば今のプリンターをもっと長く使えそうです。
時期は過ぎちゃったけど、サポートを気にしなくて良くなるなら、この辺りを出力してみたい…。
2台目は光造形プリンタもいいかな?と考えたのですがサポート問題がFDMよりさらにシビアそうなところと、薬品が結構アブナイ感じっぽい(語彙力)し、何より家が手狭なので、まだしばらくは、バリエーション豊富なフィラメントで今の一台を楽しみたいです。
木材っぽいフィラメントも気になる…!けど今回のフィラメント以上に難しそう。